裁きを求めるヒール


ああ、もう死にたくない。
死にたくない死にたくない。
どうせ死ぬなら殺して欲しい。

「……日本」

「私は、降参しませんよ」

「降参してくれ!!」

「…………」

黙殺して、私は貴方に剣を向ける。
貴方はとうとう私に銃を向けた。

だから、絶対に降参なんて私はしない。
元々、この喧嘩に参加したときから私の体調は悪かったんです。
今更、何を気にかけるというのです。
ただ、もう私の意志では引くに引けない所まで私の自尊心が持ってきてしまっただけですよ。

だから、私を殺してくださいよ。
そうすればアメリカさん、あなたはヒーローでしょう?
そう、勝てば官軍という言葉もあるくらいです。
それが例え人殺しの上に成り立つものであろうとね。
ほら、だから早く私を殺しなさい。

殺して、その死に様をその目に焼き付けなさい、青二才のお子様。
そうして、私を忘れないようにいてください。
決して、決して忘れなさらぬように。

知っていますか?
人を殺すときはその人と目が合うんですって。
そして、そのときの目が頭から離れないそうですよ。
だから、私の目を見て私を殺しなさい。
そうして、私の亡霊に苛まれるといいでしょう。

さあ、貴方からの弾丸を私が受け止めましょう。
この体を貫くその銃を与えなさい。
決して、私は優しくないのですよ。

さあ、記憶なさい。
私という悪夢を。
貴方の記憶に刻みつけましょう。
永遠に。
そうして、貴方は知っていくのです。
この愚かな殴り合いの果てにあった結末の意味のない意味を。

一年、五年、十年、五十年、百年。
まだまだ足りない。
それ位重い罪を背負って、貴方は答えを出すのです。
私という亡国を作った事を。

さあ、私を殺しなさい。
大国の子坊主。
力という暴力的平和しか持ち合わせない我侭で子供なアメリカさん。
私は、あなたという国を決して嫌いではなかったんですけどね。

私が地面を蹴りだした瞬間に、彼は狙いを外すことなく、私に銃を放った。
ああ、すみませんドイツさん、イタリア君。
もう、会えないでしょうね。
出来ることならば、もっと、平和な世界で会いたかった。
私に熱い熱を冷たい金属が与える。





「日本日本!」

「はい、何ですかアメリカさん?」

「どうして、君はイギリスと仲が悪くなっちゃったんだい?」

無邪気に聞いてくる彼は決して、悪気はないとわかっているけれども、ここでそれを聞くかと思った。
これでは確かに空気が読めないと言われてもいたしかたないとも思える。

「いえ、大した理由ではありませんよ。
 ただ、向こうが我慢できなかったみたいですよ?」

「我慢?イギリスが我慢することなんてあるのかい?
 俺にはそのことの方がびっくりだよ!」

大きく手を広げながら言う彼に、やはりオーバーリアクションだなあ、としみじみ思う。
だけれども、そこが彼のいいところなのだが。
こんなオーバーリアクションをされると、ついつい笑みがこぼれる。

「ええ、彼は我慢してましたよ。
 私は少し、彼の好意に甘えすぎました」

そう、見逃してくれるから。
見逃してもらえるから。
そう思いつつ、隣国の彼にも酷いことをしてきました。

「日本、君はそれが悪いことだと思ってるのかい?」

「ええ、まあ」

きょとんとした顔で訪ねてくる彼は、やはりまだ国としては幼いのだと思われた。
それなのに、我々の中でもっとも強いとも思われる力を持っている。
それが怖いなんて、爺のこの気持ちがわかりますか?

「そっか、俺は悪いことだとはあまり思わなかったけど……日本、君が悪いと思っているなら、謝ればいいだけの話だよ!」

「謝る、ですか」

「ああ、そうさ!」

彼はぐっと指を突きだしている。
笑顔、なんて私は最近彼以外から見たでしょうか?
いいえ、見てないですね、自分の笑顔すらも作りものにしか思えない。

「謝ればいいんだよ、自分が悪いって認められることは俺はスゴいことだと思うんだぞ。
 ヒーローだって、自分がしていることが悪いって認めることもある。
 それができる君も強いっていう証拠さ!」

歪みないその瞳に、私は自傷の笑みがこぼれる。
本当に、貴方は幼い。
幼すぎて、幼稚だ。

物事の本質がわかっていない。

「そうですね」

「ああ、そうなんだぞ!」

こうして私が笑ったことが、本当に了解してると思うなんて、本当にまだまだ青い青い。





ターンと鳴る、意外と軽い音。
それとは対象に肉を抉る不快なぐちゅっという音。
これは貫通してない様に思われるように中で熱を保っている。

「あぁっ!!」

銃声の音は確実に私を打ち抜く。
だけど、それは腹や頭を打ち抜かず私の足を。

「……っ!!」

そして間を置かず反対の足を。
もう痛みで声が出ない。
息が詰まりそうだ。

「……何故……何故!
 何故私を殺さないのですか!!」

それでも振り絞った声で叫びながら訪ねると、彼は悲しそうに笑う。

「だって……君は、自分が悪いってわかってるって前に俺に言っていたじゃないか。
 だったら、そんな風にわかってる人をヒーローの俺が倒すんじゃなく、殺せると思うのかい?」

その言葉に、私はどきりとした。
あんな何気ない会話を彼が覚えてるだなんて思っていなかった。

そしてようやっと気づく。
ああ、彼はもう、私の知っているような子供ではなかったのだな、と。
多少、気づくのが遅すぎましたかね。

おそらくは、もうあの頃から。
もう十分に大人だったのでしょう。
それでも、彼は中立でいる為に私を見なかったことにした。

ああ、なんだ。
私なんかよりも、彼の方がずっと大人じゃないですか。

「……わかりました。認めます」

「本当かい?」

ええ、本当ですよ。
もう思い知りましたから。

「ええ、私の負けです。
 参りました、アメリカさん」

そうして、私一人残りあらがい続けた争いは集結を迎えた。


2010/09/17

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「さあ、君が降参を認めたなら、俺は協力しようじゃないか!」

そう言って、手を広げ私を世界にもう一度迎え入れてくれる貴方の懐の大きさが、私を救う。
ああ、どうして、私は破壊なんて求めてしまったのか。
今はただ願う、この平穏を。

「さあ、日本。これから忙しくなるぞ!」

「はい、そうですね」

「俺について来るんだぞ、じゃないと、君は本当に危ない。
 だから……君は俺が守ってあげるから、その刀はもう捨てるんだ」

そう言って笑ったあなたはとっくに大人だと思った。
そう、それは思慮も分別も、また利己傲慢さも持ち合わせる大人に違いなかった。





10000HITリクエスト消費!
今回は匿名様リクエストの「史実の絡む日本関係の話」でした。
うん、史実は楽しいね。

今回は表現をぼかしましたが、恐らく察しの良い方は、アルの銃が何か、菊さんの撃たれた場所はどこか、そして俺がさしているものが何かがわかってくれると思います。
流石に直接表現は阻まれましたが、こういう形で書けてよかったと思います。
今わかった人はそれを念頭に入れてこれを読んでくれると嬉しいです。

あ、あと、間のアーサーとの喧嘩とは日英同盟破棄のことです。
これもまあ、わかるよな。

さて、匿名様、このような小説でよかったでしょうか?
何かあったら拍手から連絡頂けるとありがたいです。
リクエストありがとうございました。